ケガと言っても、その発生機序によって大きく「外傷」と「障害」に分類されます。
今回は、スポーツ外傷とスポーツ障害に関してお伝えしていきます。
まず、スポーツ外傷とスポーツ障害は、以下のように定義されます。
<スポーツ外傷>
転倒や衝突などの1回の外力により組織が損傷されること。
より一般的な言葉でいえば“ケガ”に当たる。
<スポーツ障害>
スポーツ外傷と比較して、比較的長期間に繰り返される過度の運動負荷により生じる筋肉・腱・靱帯・骨・滑膜などの慢性炎症反応。
では、それぞれどのような症状が見られ、代表的な疾患は何かというと...
〇スポーツ外傷
- 症状:
局所症状として、出血・疼痛・熱感・腫脹・変形などが見られ、理学所見としては疼痛部を中心とした圧痛、感覚障害、筋力低下、異常可動性などがあります。
全身症状としては、疼痛・精神的動揺による一次性ショック、出血・体液喪失による二次性ショックがあり、意識消失を伴うこともあります。
- 代表的な疾患:
非接触型外傷→アキレス腱断裂、肉ばなれ、膝前十字靱帯損傷など
接触型外傷→肩関節脱臼(タックル)、膝内側側副靱帯損傷など
特殊な外傷→また、外傷の伴う合併症として、感染・ショック・呼吸障害・腎障害・創傷遷延治癒、神経麻痺などがあります。
- 原因:
外傷には、相手競技者との接触などによる接触型外傷と、着地や切り返し時などに身体のバランスを崩すことにより生じる非接触型外傷に分ける考え方が一般的となっています。
- 対応、予後:
スポーツ外傷は、初期対応とその後の適切なリハビリテーションが極めて重要であり、適切な治療がなされるか否かにより、スポーツ復帰までに要する月日が大きく異なるほか、後遺症を生じることもあります。
〇スポーツ障害
- 症状:
急性の局所的な炎症所見は少なく、通常、熱感や発赤はなく、腫脹も外傷に比較して軽微なことが多くなります。
運動時の疼痛は持続する傾向があり、筋力低下や患部の圧痛があります。
- 代表的な疾患:
筋肉→筋筋膜性腰痛
腱→アキレス腱周囲炎、膝蓋腱炎(ジャンパー膝)、肩腱板炎(野球肩)、上腕骨上果炎(テニス肘)
靱帯→肘内側側副靱帯炎(野球肘内側型)、烏口肩峰靱帯炎(野球肩)
骨→脛骨疲労骨折、第5中足骨疲労骨折、腰椎分離症、脛骨過労性骨膜炎
神経→肩甲上神経麻痺、椎間板ヘルニア、遅発性尺骨神経麻痺、足根管症候群
軟骨→オスグッド病、セーバー病、上腕骨小頭無廃性壊死(野球肘外側型)などの骨端症
- 原因:
スポーツ障害の原因は、使いすぎ(Overuse)や過負荷(Overload)がまず第一に考えられますが、その他に身体的な問題として、
・筋肉の柔軟性の欠如・・・鵞足炎、腸脛靱帯炎、アキレス腱周囲炎
・関節の過度の弛緩性・・・動揺肩、反張肘
・骨格アライメントの異常・・・X脚、O脚、扁平足、凹足
などが考えられます。
また、競技者のフォームの問題やトレーニング法の誤りは初心者で多く見られ、さらには用具が関連することが多く、上級者やトップレベルでは練習量、練習の質、グラウンドの状態などが関係することが多いです。
- 対応、予後:
スポーツ障害を防ぐには、競技者本人のケアのみでなく、監督・コーチの理解と協力、さらには練習環境を改善することが重要となります。
また、平均的治癒期間も外傷よりも長時間を要し、発生に至った要因の改善がされないままだと復帰後も再発する可能性は高くなります。
参考文献)
・日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー専門科目テキスト③「スポーツ外傷・障害の基礎知識」
スポーツ外傷とスポーツ障害は、上記のように異なる点はありますが、外傷であってもスポーツ障害と同じように身体的要素が関わっていることは多々あります。
例1)ジャンプの着地での足関節捻挫の場合
着地に失敗してのスポーツ外傷ではありますが、着地を失敗することになった要因がどこかにあるはず...
→体幹・コアの安定性が低下していることで空中での姿勢保持ができず、体勢が崩れたまま着地をしてしまい捻挫をしてしまったなどが可能性として考えられます。
これは、非接触型だけでなく、接触型だったとしても、接触されても姿勢を崩さないだけの機能が身についていれば防ぐことができた可能性があります。
例2)アキレス腱断裂の場合
よくある受傷機転として、テニスなどで前方のボールに追いつこうとしてダッシュした際に、後ろから誰かに蹴られたような感覚がしてケガをすることがあります。
分類としては、1回の外力によるスポーツ外傷と言えますが、これも、スポーツ障害の原因として挙げられる要因も関与していると考えられます...
→ふくらはぎ・アキレス腱の柔軟性が低下していて筋・腱にかかる負荷に耐えられなくなった、フォームの問題によりふくらはぎ・アキレス腱にかかる負荷が多くなりすぎていたなどの要因が関わっている可能性が考えられます。
*あくまでも一例ですし、自分自身がこれまで対応してきた選手からのケガにいたった要因の考えですので、あらかじめご承知おき下さい。
突発的なケガの場合、「運が悪かった」「突発的なものだからしょうがない」という言葉を聞くこともありますが、ケガに至った要因を考えてみると、スポーツ障害のように、コンディション不良やフォーム・身体の使い方の問題が見られる事があります。
この場合、コンディションを整え、身体機能を維持・向上させることなどで予防も出来ると考えています。
当院では、単なるマッサージだけでなく、上記ような観点から身体の状態をチェックし、“ケガ”の予防に対してもアプローチしていきます。
もちろん、ケガからの復帰や再発予防、大会等に向けてのコンディショニングにも対してもサポートいたします。
是非一度お気軽にご連絡下さい。
たけスポーツ鍼灸マッサージ院
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