前回までの中で、「グロインペインは患部の問題だけでなく、何らかの理由によって生じた全身の機能不全が要因となって引き起こされる。そして、その評価にも、患部だけでなく全身を見る必要がある。」ということをお伝えさせていただきました。
今回は、その治療・予防を行う上で意識していること・気をつけていることをお伝えします。
選手からは、「股関節・鼠径部の痛みがなかなか改善しない」「練習を休んで一旦は痛みが良くなってけど、練習を再開してしばらくしたらまた痛くなってきた」ということを相談されることが多々ありました。
何らかの原因(他の場所のケガなど)によって全身の機能不全(硬さ・筋力低下・動作のタイミング不良・連動性の低下など)があったとしても、始めのうちは痛みを生じませんが、機能不全の状態でプレーやトレーニングを継続していると、結果として股関節・鼠径部への負荷が重なりある時点から痛みを発生することになります。
この場合、練習を休むことで器質的疾患が修復し痛みが改善したとしても、機能不全が改善していなければ同じような負荷が同じ場所にかかり、プレーを続けていく中で痛みが再燃したりと、復帰に時間がかかることになってしまいます。
また、痛みを我慢したままプレーを続けていたり、「練習を休む-練習再開-痛みの再燃-練習を休む」ということを繰り返したりしていると、復帰まで余計に時間が掛かることもあります。
逆に、機能不全が改善して効果的な運動連鎖が行えると、器質的疾患が修復していなくても復帰できるケースもあります。
groin painの治療には、機能不全を改善して、効率的な身体の使い方・正しい身体の使い方ができるようにする必要があります。
そのために、股関節周囲の可動性を出すために股関節周囲や腰殿部・下肢のアプローチをしたりや、安定した状態で動作の連動性を作れるようにするために胸郭・肩甲骨周囲・頚部などにアプローチしたりなど、徒手などを用いて全身からアプローチしていきます。
そして、それによって必要な場所がきちんと動くようになった後に、トレーニングを行い、安定性や連動性を獲得してきます。
特に、片側の上半身(肩甲帯・胸郭)と反対側の下半身(股関節・骨盤)の連動した動き(=クロスモーション)を上手に行えるようにすることが重要になります。
このクロスモーションの動きが、鼠径部・股関節周囲の痛みの改善だけでなく、プレー中の走る・投げる・蹴るなどでの連動した動作にもつながってきます。
この可動性(柔軟性)・安定性・協調性(連動性)の機能改善は、治療・リハビリだけではなく、ケガを予防するためにも有効となります。
痛みがない状態で機能不全があった場合(disfunction & no pain=DN,Cookら)に、痛みが出る前の早い段階で機能不全を見つけ出し改善することができれば、予防をすることができます。
また、普段からこの機能不全を取り除き、効果的な運動連鎖が行えていれば、たとえ痛みが発生したとしても、早期復帰が可能となる場合が多くあります。
最終回となる次回は、実際の例をもとに、どういったアプローチをしていくのかの一例をご紹介いたします。
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